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インタビュー「マーケティングの処方箋」第1回 マーケティングサイエンス

 

市場環境の変化に対応し、マーケティングの現場の課題解決のために、適切な”処方箋”を出すための学問 ― マーケティングサイエンス

 市場調査クリニック・インタビュー第1回は、マーケティング活動を支える学問、「マーケティングサイエンス」とは何かを多摩大学教授 朝野煕彦先生とのインタビューを通してご紹介します。


 

マーケティングサイエンスは”臨床医学”

 マーケティングサイエンスの立場は医学に例えて言えば、病理研究ではなく臨床医学と言えます。病理研究ではなぜ人が病原菌に感染して、それが人間の体にどういう作用を及ぼして死に至ったか。その経緯、死亡原因を究明しようとします。それが基礎医学に属する病理の役目であって、死んだ後で死体を解剖してからでないと分からない問題が多い。ですが、マーケティング活動は会社が死んでしまってからでは手遅れなので、臨床医学のように、生きている間に困っている患者を治してあげるのがその役目であると考えています。

 例えば、「健康診断」はなぜ役に立つのでしょうか? 健康診断を受けるとまず検査をしますね。次にそのまま推移すれば患者がどうなるかという予測をする。それだけではなく処方箋も出す。最終的には手術をしたり薬を飲ませたり、あるいは生活習慣を変えさせたり、そこまでワンセットにしてはじめて「健康診断」の意義があると言えます。ただ検査だけをやって「おたくの会社はダメな会社ですね」あるいは「この事業部門はダメです」「この製品は売れていません」と言ったって仕方ない。そのような実態把握だけでは何も救えません。このまま何もしなければ来年は危ない、再来年はさらに危ないぞ、ということをちゃんと予測して今から手を打てるようにする。そこまでやらないと本当のマーケティングのサポートになっていないと思うのです。

 つまり、マーケティングサイエンスは単に現状ではダメだ、と言うだけではなくて、それならどうしたらいいのか?という具体的な解決策、つまり―マーケティングへの”処方箋”を導く。そこまでしなければ、無責任な評論に過ぎないと批判されてもしかたないと思います。


 

マーケティングサイエンスで、不安定な時代を生き抜く具体的な戦略―処方箋を導く

 「昨日までの延長上に明日がある」という非常に安定的な時代では、新しい切り口とか処方箋などは必要ありませんでした。しかし、現在の産業界は急激に市場環境が変わっています。海外からも競合が来るとか、国内でも異業種が自分たちが守ってきたドメインに参入する、ということはいくらでも起きます。勘と経験と度胸、俗にいうKKDだけでは通用しなくなってきている。マーケティングにおいても、従来のようにスローガンとか精神論だけ言っていて、マーケティング精神を持ちましょう、と言ったところで通用しないと思います。

 何故なら、ただスローガンを言っているだけでは働いている人は具体的に何をしたらいいかが分からないですよね。現在の仕事を変革して、新しい仕事にチャレンジするときに、ただ「お客様を大事にしています」と言っているだけでは仕方ないので、じゃあ具体的にどういう戦略がベターなのか、というところまで処方箋を出さなければいけない。

 つまり、処方箋には「事実と論理に基づいて何をすべきか」という戦略を示さなければならない。そうするとマーケティングの論理体系というか、広い意味でのモデルが必要になってきて、モデルに基づいて将来の市場を予測するためにはシミュレーションや予測作業が必要になります。このような実務的な活用を強く志向する知識体系がマーケティングサイエンスなのです。

 

 今回は「マーケティングサイエンス」とは「事実と論理に基づいて何をすべきか」という戦略を導き出すための技術体系である、というご紹介を頂きました。では次回は、実際にマーケターやリサーチャーが知っておくと良い、マーケティングサイエンスのエッセンスについてご紹介します。(2月17日更新予定です)なお、市場調査クリニックでは、マーケティングサイエンスに基づき、具体的な戦略まで導出する様々な手法をご紹介していますので、詳しくはこちらをご覧下さい。


 

朝野 煕彦 (あさの ひろひこ)

1969年、千葉大学文理学部卒業後、マーケティング・リサーチの企業に就職し、コンサルティング業務を行う。1980年、埼玉大学大学院修了。その後、筑波大学特別研究員、専修大学教授を経て、東京都立大学、首都大学東京教授を歴任する。現在、多摩大学大学院客員教授。日本マーケティング・サイエンス学会論文誌編集委員。日本行動計量学会理事。著書は「最新マーケティング・サイエンスの基礎」(講談社)など多数。



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