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「マーケティングリサーチの寺子屋」鈴木敦詞氏インタビュー - 第1回 前編


「マーケティングリサーチの寺子屋」鈴木敦詞氏インタビュー – 前編

>>「鈴木 敦詞氏インタビュー – 第1回 後編」はこちら

 マーケティングリサーチについての情報発信を早くから行っており、今もブログfacebookでの情報発信を活発に続けられている、「マーケティングリサーチの寺子屋」の鈴木敦詞氏のインタビューの連載を開始致します。このシリーズでは、特に「リサーチ」についての考え方や、これからのリサーチの役割についてなど、リサーチに関するテーマについて、お話をお伺いしていきたいと思います。

 第1回前編は、「マーケティングリサーチの寺子屋」を始められた時のお話から、リサーチという世界の変化について、お話をお伺いしました。(後編はこちら


 

マーケティングリサーチの寺子屋を始めた背景
~業界がまだ目覚めていない時に、「石ころ」をポンッと投げてみたかった~

 マーケティングリサーチの寺子屋を開始した2006年当時は、ちょうどネットリサーチが普及してきた頃です。私はいわゆる”Conventional (よくいえば伝統的、悪く言えば型にはまった)”なリサーチ会社に所属していたのですが、ネットリサーチが普及するにつれ、リサーチの基本が疎かになっていないか?という問題意識がありました。なので、寺子屋では「リサーチの基本的な考え方ってどうなっていくの?」「みんな、しっかり基本を勉強しようよ」といったアラートを発信したいというのが、最初の動機でした。「寺子屋」という名前も、このような想いからのネーミングです。 

 ただ、実際に始めてからはリサーチの基本的な考え方だけでは済まなくなってきて…。blogをはじめた2006年頃は、TwitterもFacebookももちろんなかったですけど、WEB2.0ということが言われ、価格.com@cosmeなど消費者がネットを通じて情報を交換することが少しずつあたり前になっていました。また『心脳マーケティング』や『インサイト』という本が出版されたのもこのころで、アンケートやインタビューでは消費者のほんとの気持ちはわからない、というようなことが言われてもいました。さらに、ニューロマーケティング、エスノグラフィ、行動経済学、顔認証やRFIDのようなIT技術などの話が次々に出てきて、「伝統的なリサーチだけでは、とてもじゃないけど話にならないぞ」と感じるようになり、リサーチに影響を与えるかもしれないと思う情報についても発信するようになりましたね。このあたりの情報には、わりと早めにキャッチアップできていたんじゃないかと自負してますけど(笑)。

 こうやって振り返ると、「マーケティングリサーチ業界という静かな池に石ころを投げてみたかった」という感じですかね。吉田松陰の「松下村塾」ではないですが、業界の辺境で書く私の記事が何かの気付きとなって、リサーチ業界にいろんな人や動きが出てくればいいな、と思っています。実際、このblogを通じてJMRXという活動のきっかけにもなっていますし、そういう意味では石を投げた効果、波紋にはなったかな、という気はしています。


 

リサーチはコミュニケーション

 「回答者とのコミュニケーション」、これがリサーチの基本だと思っています。ビックデータの時代だろうが、ソーシャルリスニングだろうが、MROCだろうが、この基本はかわりません。たとえば、調査票の作り方にも色々ルールはありますが、基本的に対象者に伝わるようにする、気持ちよく答えてもらう、というのが前提にあります。しかし最近の調査票の作りをみると、正直ひどいと感じる事が多いです。例えば、20ブランド×20のイメージ項目のマルチマトリクス(複数回答でのマトリクス回答形式)の質問なて、きちんと答える気にならないでしょう。他にも、あてはまる選択肢がない、回答対象ではないと思うのに答えないといけないなど、基本が疎かになっているなと感じることが少なくないです。

 以前はリサーチャーと回答者の間に調査員さんというプロがいました。今のネットが調査員という「人」だったわけです。熟練の調査員さんは、どんな質問をすると回答が返ってこないとか、どんな質問にするといい加減な回答になりそう、というのを熟知していました。リサーチャーが作った調査票に対して「これは答えられない」「どういう意図で作ったのか」といったやりとりが回答者に聞く前にありましたので、そのフィルターを通して学ぶ機会があったのですが、ネットリサーチではその様な経験ができません。

 また、紙の調査票だと回答者の自筆の回答を紙で見る事ができました。そうすると、例えば先ほどのマトリクスの例では、ひどい回答者は選択肢を大きい○(まる)でざっと囲ってしまうかもしれません。あるいは、無回答が多い設問もすぐにわかります。そういう回答が散見されれば、この質問は答えたくなかったかとか、面倒くさかったかという加減が分かりました。ネットリサーチでは、無回答は許されないですし、論理上正しい回答をしないと先に進めないので、見かけ上はきれいなデータしか得られません。なので、このような設問上のミスに気づくことができなくなっています。

 ネットリサーチが主流になる中で、そういう学びの機会が減少していると思います。でも、リサーチは回答者とのコミュニケーション、ということを今のリサーチャーには意識してほしいと思っています。ただでさえ、消費者は分かっている事でもちゃんと答えられるのか?という疑問がある中で、聞きたいことを、聞きたいだけ、自分が聞きたいように一方的にダーッと聞いて、相手になんの選択も弁解も与えずとにかく「教えて、教えて」と言っているだけでは、伝わりませんし回答者も答えたくなくなります。

 とはいえ、昔のように紙の調査票に戻ろう、というわけにはいきません。最低限、自分で作った調査票を自分で回答してみる、まわりの数人に答えてもらうということくらいは、やってほしいと思います。できれば、業界に詳しくない人がいいですけど。それだけでも、自分の作った調査票がコミュニケーションツールとしてどうなのかということに気づくことができるでしょう。

 リサーチの教科書にはいわゆるテクニックやハウツーしか書いてないかもしれないですが、その背後にある考え方や哲学、今回の話であれば、「リサーチはコミュニケーション」という本質も意識して学ぶことが大切です。もう少し話を広げると、マーケティングリサーチはマーケティングの為に行うものです。リサーチ自体が目的ではなく、マーケターの課題・目的を達成するために、どんなリサーチが必要か?という調査の本質とロジック(市場調査クリニックの手法一覧ページへリンク)をよく考えることが大切です。

後編へ続きます>>


 

鈴木 敦詞 (すずき あつし)

りんく考房代表。マーケティングエージェンシーや調査会社を経て、2006年に独立し現在に至る。マーケティングリサーチの研修、企画・分析を手がける傍ら、blog「マーケティングリサーチの寺子屋」で情報を発信する。日本マーケティングリサーチ協会個人賛助会員。2009年多摩大学大学院修士課程(経営情報学)修了。


 



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