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「マーケティングリサーチの寺子屋」鈴木敦詞氏インタビュー - 第1回 後編


「マーケティングリサーチの寺子屋」鈴木敦詞氏インタビュー – 後編

>>「鈴木 敦詞氏インタビュー – 第1回 前編」はこちら

 前編に引き続き、「マーケティングリサーチの寺子屋」の鈴木敦詞氏のインタビューを掲載致します。このシリーズでは、特に「リサーチ」についての考え方や、これからのリサーチの役割についてなど、リサーチに関するテーマについて、お話をお伺いしていきたいと思います。

 第1回後編は、分析に必要な視点や、今後のリサーチャーに求められることについて、お話をお伺いしました。


 

「そのデータは、誰の回答なのか」が分からないと、分析を誤る

 ネットリサーチは特にそうですが、調査で集めた”ここに今あるデータは一体誰を代表としたデータなのか?”が、分析以前に明確にされている必要があるとおもいます。リサーチでのサンプリングの一番の基本は、母集団を規定し、そこから対象者を抽出する、という考え方なのは周知の通りです。しかし今は、正しいといわれるサンプリングを行うことは現実的にはできません。そこで考えないといけないのは、逆に集まったサンプルから母集団を考え、想定することです。 

 年代や性別、使っている商品などの属性を軸として何かしらの”母集団”をイメージし、データを回収すればサンプルは手元に集まります。けれども、そこに集まったサンプルは”社会調査”で学ぶ厳密なサンプリングに則ったデータではないということは、すでに皆わかっているわけです。だとしたら、その集まったサンプルは誰なのか?をちゃんと性格付けする、理解するためのデータも取っておかなければいけないと思います。「結局このデータは、誰の回答なのか」が分からず分析を行っても、結論を間違う恐れがあるからです。

 これは伝統的なリサーチに限らず、ビッグデータの分析でも、ソーシャルリスニングの分析でも、欠かせない考え方だと思っています。どんどんデータが取れてしまうのは良いのですが、そもそもそのデータは誰の行動や発言を集めたデータなのかを考えておくべきです。あるいは、全てのデータを使うべきなのか、抽出という過程をどう考えるのか、サンプリングの理論に則った考え方をどう組み込んでいくべきなのか、などの課題がありそうです。データの性格を判断した上で分析をしていかないと必ず「これは誰のこと?」となりますから。

 最近、「コンテクスト」という言葉を、よく目にするようになりました。コンテクストを一言で説明するのは難しいのですが、会話の背景となること、文脈ということができます。人がコミュニケーションするには、このコンテクストが大切だと言われています。たとえば、「優しい人だよね」という言葉があったとします。しかし、この言葉がどういう状況で、誰が発したのかによって、その意味するところは異なってきます。これまでお話してきた、「誰の回答なのか」という問題は、これと一緒です。インタビュー-第1回前編では、リサーチの基本はコミュニケーションと言いました。だからこそ、コンテクストとなるデータの背景を理解することがとても重要なのです。具体的にどうすればいいかをお伝えすることは難しいのですが、あなたが誰かと会話するとき、会話を理解するために、どんな情報が欲しいと思うか、リサーチもそれと一緒です。今回のテーマで分析するときに、回答者のどのような性格付けがわかるといいのか、そのことを常に考えておくことが大切なのだと思います。


 

これからのリサーチャーの役割

 1つの手法で8割方見当がつけばいいや、という時代は終わったのだろうと思います。以前はアンケートをやれば1本500万とかでしたから、それが全てということも少なくありませんでした。それがないと、特にメーカーは、どのくらい認知があるのか、使ってもらっているのか、使っている人が何を考えて使っているのか、分かりようがありませんでした。しかし今は、まず購買実態を見る、つまり買ったか買わないかのPOSデータを見ればいいわけで、意識でしたら価格.com@cosmeを見るという選択もありますし、ツイッターで見られるかもしれません。

 このように、広い意味でのリサーチがどんどんできるようになっています。かつ、伝統的なリサーチが独自の優位性を保てる範囲は狭くなってきています。その中でリサーチャーにとって重要なスキルのひとつは、どういうデータなのか、誰が言っているのかを明確にした上で、知見を導き出せる分析力なのだと思います。日本でのリサーチ業界の成り立ちをみると、広告代理店のデータ収集センター的な位置づけで発展してきた部分もあり、データコレクションに関しては色々研究されてきましたが、広告代理店などがやっている企画や分析と、今のリサーチ会社が同水準にあるかというと、懐疑的にならざるを得ません。それはネットリサーチのせいとかではなく、昔からデータを取る方に力点がいってしまい、データを解釈・分析しそこから知見を導くといった所に、あまり注力してこなかったからだと思います。

 しかし、今だからこそデータから知見を導き出す為の分析力が重要になってきています。例えば、最近よく話題に上がる”ビックデータ”の活用にはデータベースエンジニア、データサイエンティストとマーケター、この三者の素養がないと難しいと言われます。大きなデータから必要なデータを抜き出して構造化するエンジニアと、どんな手法を利用するとどういう解が得られるかがわかるデータサイエンティスト、更にそれをマーケティング的に包括するマーケターがいないと、ビックデータは活かせない、という事です。たとえば、IBMがSPSSを買ったのはデータサイエンスの部分を巻き込まないと、ビックデータに対応できないと判断したからではないでしょうか。

 しかし、この三者の技術と専門性を一人の人間が高度なレベルで持つというのは、並大抵のことではない。それこそ、スーパーマンです。だとすると、それぞれのエキスパートがコラボレートしながら、ひとつのテーマに取り組んでいくことが現実的になるのではないかと思っています。リサーチ会社がポジションを取るとするなら、データサイエンティストの部分が一番近いかもしれません。クライアントの課題を整理し、データコレクションのデザインを行い、適切な分析方法を提案する、そして得られた分析結果についてサイエンティストの立場からのコメントを行い、マーケターの判断を支援する。ここに、リサーチャーの価値と可能性があるのではないかと思っていますし、そのような提案ができるリサーチ会社に、今後の可能性があると思っています。


 

  鈴木敦詞氏の第1回インタビューでは、「マーケティングリサーチの寺子屋」を運営されてきた鈴木氏の視点から、リサーチ業界の変化と、今後のリサーチャーの役割についてお話をいただきました。市場調査クリニックでは、鈴木氏の「リサーチ会社がポジションを取るとするなら、データサイエンティストの部分が一番近いかもしれません。」というお話にあるように、マーケターやリサーチャーの支援を行うための様々な情報発信や、分析手法の詳細な紹介既存データの分析サービスを行っていますので、ご参照下さい。

 次回からは、具体的なリサーチの視点や考え方について、お話をお伺い致します。ご期待下さい。

「鈴木 敦詞氏インタビュー – 第1回 前編」はこちら


 

鈴木 敦詞 (すずき あつし)

りんく考房代表。マーケティングエージェンシーや調査会社を経て、2006年に独立し現在に至る。マーケティングリサーチの研修、企画・分析を手がける傍ら、blog「マーケティングリサーチの寺子屋」で情報を発信する。日本マーケティングリサーチ協会個人賛助会員。2009年多摩大学大学院修士課程(経営情報学)修了。


 



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