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マーケティングの処方箋 第8回 大きいことは良いことか-市場反応モデル -朝野熙彦

  

大きいことは良いことか-市場反応モデル』 -朝野熙彦

 市場反応モデルというのは広告、販売促進、価格戦略などのマーケティング変数を説明変数にして、商品の売り上げや販売シェアを予測するためのモデルをさします。

 マーケティング活動を複数組み合わせて実施するのは通常のことで、それをマーケティング・ミックス(marketing mix)といいます。企業のマーケターとしては、自社のマーケティング・ミックスの効果を予測したいし、活動後には効果を測定したいのは当然です。ではどのようにモデルビルディングをしたらよいのでしょうか?というのが今回の話題です。


 

■どんどん増える説明変数

  売り上げを決める要因は自社のマーケティング・ミックスだけではありません。競合他社のマーケティング戦略も影響してくるでしょうし、商材によっては気温の影響も受けるでしょう。マクロな要因としては、国際貿易、景気、若年人口の減少などの社会的・経済的要因も影響するかもしれません。つまり市場反応モデルで予測したい基準変数は、売り上げという単純な変数なのですが、説明変数の方は考えれば考えるほどどんどん増えていくのです。計量経済モデルは数百の構造方程式から出来ていますが、市場反応モデルも同様にビッグ・モデルになりがちです。
市場反応モデルを一般的に

と書くことにしましょう。

モデル構築のポイントは説明変数として何を選ぶか、関数fとして、どのような結合則を選ぶか、時点tをどういう形でモデルに組み入れるか、パラメータ(たぶんベクトル)θをどう推定するか、そして誤差項εとして何らかの確率変数を仮定するか、ということにつきます。モデルビルディングにあたって考慮すべき点はこのようにいろいろあるのですが、そういう悩みは別にして説明変数は関係者の要望を聞けば聞くほどどんどん増えていきます。


 

■結合則combinationruleの決め方が難しい

結合則のfというのは、各説明変数がどういう関係で結びつくべきものなのかというルールをさします。これがモデルの根幹を成します。がそれぞれどういう条件をクリアした時に売り上げが上がりだすのか?説明変数に相乗効果はあるのか、などマーケティング活動に対する消費者の反応に関するの深い理解が問われる問題です。
 何の仮定もできなければ線形関数を仮定して重回帰分析を使うことになります。これは説明変数が加法的に売り上げに寄与するというごく単純なモデルです。

という重みづけの合計で売り上げが決まるという素案が出発点になります。次にダイナミックな視点を取り入れます。たとえば広告投入量を説明変数にした場合は広告の当期効果だけでなく、過去の残存効果を加えます。そして残存効果は時間の経過とともに指数的に減少するという関数を使ったりします。このように市場反応モデルが育っていくわけです。モデルビルディングにはそれなりの専門的な経験が必要になります。


 

■予測は当たれば良いのか

図:製品評価を用いた購入意向の
シミュレーションモデル(リンク)

図:売上・販売量予測モデル(リンク)

説明変数を増やしていけば、モデルの予測値と過去の売り上げ実績は次第に接近していきます。重回帰分析の場合は決定係数という指標が自動的に計算されて、この値が1.0に近づいていくわけです。

決定係数は重相関係数の2乗ですから、重回帰分析に限らずどんな予測モデルであっても計算できます。決定係数が高くなると一見嬉しいわけですが、過去のデータにモデルがフィッティングできたとしても将来の予測に役立つかどうかは別の話です。オーバーフィッティングとか過学習といわれる状態になります。 

新しいデータを加えてモデルの推定をやり直すとパラメータが大きく変動するかを調べることをショックテストといいます。頑健なモデルはショックテストをしてもパラメータは安定しているものです。

パラメータの安定性の他に気をつけなければならないのが、管理の可能性です。説明変数をどんどん増やしたところで、企業としてコントロールできない説明変数に関しては手を打ちようがありません。適確なマーケティングができるということにはなりません。予測精度は低かろうともマネジリアル(管理可能)なモデルの方がマーケターには有用なのです。

 


 

■マーケティングにとって有用なモデルとは

1.企業にとって管理可能な説明変数である

2.説明変数にあいまいさがなく、測定誤差が小さい

3.調査データをモデル推定用のデータと、妥当性検証用のホールドアウト・データに2分して、前者でからパラメータを推定し、後者のデータで予測精度を検証した時に予測精度が高い

4.ショックテストに耐える

5.売り上げの決まるメカニズムが説明できるモデル

予測精度がいくら高くても、マーケティングの理論や常識に反するモデルでは有用とはいえません。大きいことは良いこととは言えないことに気をつけたいと思います。


 

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朝野 煕彦 (あさの ひろひこ)

1969年、千葉大学文理学部卒業後、マーケティング・リサーチの企業に就職し、コンサルティング業務を行う。1980年、埼玉大学大学院修了。その後、筑波大学特別研究員、専修大学教授を経て、東京都立大学、首都大学東京教授を歴任する。現在、多摩大学大学院客員教授。日本マーケティング・サイエンス学会論文誌編集委員。日本行動計量学会理事。著書は「最新マーケティング・サイエンスの基礎」(講談社)など多数。


 





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