コンテクスチュアル・ポジショニング

競合製品のポジショニングを切り崩すコンセプト開発

競争の激しい市場において競合製品のポジショニングを解析し、
その優位性を切り崩すコンセプトを開発する

  

競合より競争力の強い製品コンセプトを開発するには、どう取り組めばよいでしょうか。

 衣類用洗剤のマーケティングをしています。新製品のコンセプトを開発しているのですが、消費者の主要なニーズは既に競合ブランドに掘り起こされており、自社が入り込めるポジションが見つかりません。競合に負けない強いコンセプトを開発し、競合のシェアを切り崩して行きたいのですが、どのように取り組んだらよいのでしょうか。

 

「競合のポジショニング戦略を解析し、それを切り崩す」という視点でコンセプトを作成します。ここでは、競合より高いレベルで消費者インサイトを突けるコンセプトを開発する為のロジックを紹介します。

 自社製品が競合製品より「自分向けである」と思わせる事の出来るコンセプトを開発して、競合ブランドの魅力を低減・陳腐化させましょう。その為に「競合製品は、どんな消費者を突いてきているのか?」「それを上回る為には、自社製品はどんなインサイトを突けばよいか?」を解明する分析を行います。

 

マーケティング現場の事情と課題

 日本のような成熟市場では多くの産業で主要なニーズはほぼ既に充足されており、機能だけでは差別化を図るのが年々困難になっています。この様な場合、ホワイトスペースを「見つける」のではなく、「消費者の心の中に創る」戦略に切り替える事が必要となります。スペック的には優劣がつけがたく競争が激しい市場でも、競合より自社が戦いやすい領域を消費者のマインドの中に創り出す事が出来れば、戦略上の優位性を築く事が可能となり、そこがホワイトスペースとなります。

 とはいえ、クリエイティブ表現を変えたり新しい造語を用いたコンセプトメイクでは、消費者から見てあまり変わらないという事も往々にしてあります。重要なのは、自社製品の特性を消費者の生活コンテクストや頭の中のイメージと強く関連付け、自社製品をより「自分向けである」と納得してもらう事です。

 これを「レレバンス=自己との関連」と言います。つまり「この製品・ブランドは、自分の様な生活コンテクストを持ち、自分の様なキモチや悩み・価値観を持つ消費者の為にあるんだな」と、競合より高いレベルで思わせる事が出来るコンセプトを開発すればよいわけです。それにより消費者のインサイトを競合より高いレベルで突く事ができますから、結果として競合製品の魅力を陳腐化・低減し、自社のポジショニングの優位性を築きやすくなります。

 ここでは、「自社の製ベネフィットを、どのような消費者インサイトと結び付ける事で競合より高いレレバンス(自分ゴト化力)を持つ事ができるか?」という課題を分析するロジックとフレームワークを説明します。その結びつきを基にして、戦略的に強い製品コンセプトを作成しましょう。

分析のゴール

競合のポジショニングより高いレレバンスが得られる「製品ベネフィット - 生活者コンテクスト - 消費者インサイト」の組み合わせを見つけ、コンセプトに落とし込む。

分析のロジック

1
ターゲットの設定

製品のターゲットを設定する

2
競合製品のリストアップと、ベネフィットの抽出

ワークショップやデスクリサーチを通じて、競合製品のベネフィットや特性を洗い出す

3
生活コンテクスト、インサイトの探索

観察調査やデプスインタビューなどにより、消費者が生活コンテクストにおいて思った事・製品を利用して感じるキモチ・起こった出来事などを、発言・事実ベースで抽出する

4
質問票作成とデータ回収

2と3で抽出した項目を専用の質問票に落とし込み、ターゲット消費者におけるレレバンス値(自分ゴトとしての大きさ)を測定する

5
「製品ベネフィット - 生活コンテクスト - インサイト」間の結びつきの強さを解析

2で抽出した「製品ベネフィット」と、3で抽出した「生活コンテクストとインサイト」の項目間の、結び付きの強さを解析する

6
競合のポジショニング解明と、自社の製品コンセプトの開発

競合製品のコンセプトの訴求構造を解明し、コンセプトの競争力を算出する。その競争力を上回るレレバンスを持つ「自社製品ベネフィット - 生活コンテクスト - インサイト」の結びつきを見つけ、自社製品のコンセプトの基とする

アウトプットの解釈

ターゲット設定と競合製品のリストアップ
 まず、製品のコミュニケーションターゲットを設定します。製品の開発段階から想定しているターゲットがある場合、そのターゲット像を用いますが、ターゲットが明確で無い場合、市場規模や製品の特性からターゲットを設定します。

 ペルソナを用いて製品開発をしている場合には、そのペルソナの市場規模を測る為「ペルソナセグメンテーション」を用います。また、製品がすでに出来てしまっている段階で、最適なコミュニケーションターゲットを探索・設定するには、「アクセプターフォーカス」という手法を用いると明確にターゲット設定ができます。

 次に現在市場にある競合製品をリストアップし、自社製品・競合製品のベネフィットの洗い出しを行います。競合製品のベネフィットを洗い出しておくことで、後に作成する自社製品のコンセプトの競争力を、競合との相対比較の中で算出する事が出来るようになります。


インサイトの探索

 次に設定したターゲットのインサイトと、そのインサイトが生まれる事となった背景(生活者のコンテクスト)を探します。インサイトは、表出していない消費者の不満や問題点、要望等の”潜在的なキモチ”です。

 インサイト探索は、観察調査やデプスインタビューなどの定性調査、またはワークショップを通して行います。具体的には、潜在ニーズと共に、利用時の気持ちや利用シーン、事情、ブランドに対するイメージや、様々なコンタクトポイントにおけるブランド体験などの「生活者コンテクスト」を把握し、項目としてまとめておきます。


定量調査とデータ解析

 リストアップした「自社製品・他社製品のベネフィット」とまとめた「インサイト」及び「コンテクスト項目」を元に専用の調査票を作成し、定量アンケートで各項目についてのデータを集めます。定量アンケートで集めたデータを解析すると、ベネフィット項目とコンテクスト項目の間の結びつきの強さを表すパスを引くことができます。下図で確認できる様に、自社製品・競合製品共に製品ベネフィットがコンテクストやインサイトと結びついています(結びつきが強い箇所にパスが引かれます。弱い箇所にはパスは引かれません)。


競合コンセプトの訴求構造と競争力を解明

 さて、ここまでで競合よりインサイトレベルで強いコンセプトを作る準備が整いました。ここでのポイントは、「自社の製品ベネフィットは、どんなインサイトと結び付く事で競合より高い訴求力を持つ事ができるか」です。その結びつきを基にして、戦略的に強い製品コンセプトを作る事ができるからです。さて自社のコンセプトを作成する前に、まずは競合製品のコンセプトの訴求構造(バリュープロポジション)と、その競争力を見てみましょう。

 解析を進めると、「製品ベネフィット - 生活者コンテクスト」の組み合わせそれぞれにつき、レレバンス値という数値を算出する事ができます。この値は、「あるベネフィットを軸にしてあるインサイトに訴求した時、それがどれ位消費者に刺さるか(自分向きと共感してもらえるか)」を定量化した数値です。この値がコンセプトの競争力を示す指標となります。

 競合は、「ニオイ汚れをしっかり落とす」というベネフィットを、「旦那のYシャツの汚れが気になる」という事情に根差した「1回でしっかり汚れが落ちてほしい」というインサイトに結びつけるポジショニング戦略をとっている事が分かります(少なくとも、消費者にはそう映っています)。

 この結びつきによって生まれる競合製品コンセプトのレレバンスの値は75点と算出されたとします。競合のポジショニングを切り崩す事のできるコンセプトを開発するには、75点を超えるレレバンス値を持つパス(結びつき)を探索しなければいけません。


競合を超える共感度を持つパスを探索

 自社製品のベネフィットに連なるパスを見ていくと、「食べ物汚れがつきにくくなる」というベネフィットによって、「小さい子供がいるので汚れ物が多い」という生活コンテクストを背景とした「汚れを予防したい」というインサイトを突く事で、90点というレレバンス値を持つパスが見つかりました。このつながりに沿ってコンセプトを開発することで、消費者に競合よりも”自分向けである”と思わせることができそうです。

 この様に、コンセプトがインサイトレベルで競合より高い訴求力を持つ為には、競合製品より自社製品の方がより「自分に向いている、自分にふさわしい」と共感してもらう事が必要です。同じベネフィットでも、組み合わせるインサイトによって、消費者の共感の度合いは異なってきます。どのベネフィットとどのインサイトの組み合わせが一番「消費者に、自社製品を自分向けと思わせる事ができるか」をファクトベースで解明し、競争優位なコンセプトを開発しましょう。


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