アウトプットの解釈
まず、『顧客分析』として、ターゲット消費者を設定し、ターゲット消費者がもつニーズの種類、規模、重要度を把握します(ターゲット消費者の設定手法はコチラ)。この例では、ターゲット消費者のニーズとして「ホテルやツアーのクチコミの評価が見たい」、「自分にあったプランを提案して欲しい」など5つのニーズを抽出し、ニーズごとにその需要規模と重要度を算出しています(上表は重要度の高い順に列挙)。
次に『競合分析』として、既存のサービスがターゲット消費者のニーズをどの程度満たしているかを把握します。例では、その充足の度合いを分析した結果を“充足率ベンチマーク表”にまとめています。表を見ると、「自分にあったプランを提案して欲しい」というニーズは、現在の自社・競合サービスがニーズを満たしきれておらず、かつニーズ重要度が高いため、ポテンシャルの高いホワイトスペースと言えます。(補足:ホワイトスペースを”重要度”から考えるか、”需要規模”から考えるか)
狙うべきホワイトスペースが定まった後は『自社分析』として、自社製品のベネフィットの内、そのホワイトスペースに対して訴求力の強いベネフィットを探索します。この例では解析の結果、「自分にあったプランを提案して欲しい」というニーズに対して、「おすすめプラン作成機能」というベネフィットの訴求力が高い事が分かりました。このベネフィットを差別化ポイントとしてポジショニングすることで、効果的にホワイトスペースに訴求できると考えられます。
このようにホワイトスペース・ポジショニングでは、『顧客分析』、『競合分析』、『自社分析』という3Cの観点から市場環境の分析を行うことで、ホワイトスペースを探索し、そのスペースに自社ブランドをポジショニングするためのコアとなる自社ブランドの差別化ポイントを把握することができます。
<補足: ホワイトスペースを”重要度”から考えるか、”需要規模”から考えるか>
上ではニーズの重要度からホワイトスペースを考えていきましたが、需要規模、つまりニーズの広さからホワイトスペースを特定するという考え方もあります。ニーズの強さ(重要度)とニーズの広さ(需要規模)のどちらの視点からホワイトスペースを見つけるか、はブランド戦略によります。
当該製品を消費者に幅広く受け入れてもらいたいのであれば、需要規模で見るべきです。ただしその場合「浅く広い」消費者を対象にした大衆ブランドとして認識される可能性があり、築ける参入障壁は低くなりがちです。また、ブランドスイッチが起こりやすくなります。とにかくより多くの人に1,2回買ってもらってなんぼ、という製品の場合は需要規模からホワイトスペースを探索してよいと考えられます。
逆に、絞り込まれた特定の消費者層が繰り返し購買してくれるブランドを構築したい場合は、重要度から見るべきです。この場合、ブランドは顧客との親密な関係を築きやすくなるので、レレバンス(自分向けのブランドであると認識される事)が高まり、ブランドロイヤルティが向上するので継続購買が起こりやすくなり、参入障壁も高くなります。ただし、市場規模が狭い為、売上が頭打ちになりやすくなり、慎重なブランドエクイティの管理が求められます。
この例では、「競合が多く、すでに自社も展開している旅行予約サイト市場に、独自の新サービスを投入したい」という設定です。その場合、既存サービスとは差別化され、特定の顧客層に繰り返し利用してもらうような深いサービスが必要だろうと考えられますので、ニーズの強さ(重要度)という視点からホワイトスペースを探索しています。