『2016年新刊書の刊行にあたって』 -朝野熙彦
これまで19回にわたりマーケティングの処方箋というコラムでコレクシアの村山代表のインタビューに答えてきました。しばらく間が空きましたが、その間何をしていたのかという報告をさせていただきます。
私はマーケティング・サイエンスとは、空理空論を述べる書斎の学問ではなく、データと論理で実社会に貢献する実学であると考えてきました。
マーケティング活動を効果的に計画実施するためには、市場予測と市場コントロールの機能が不可欠です。市場コントロールとはおこがましく聞こえますが、そもそもマーケティングとは顧客に働きかけ、顧客にとって幸せな世界を創造する活動だと思います。
というわけで市場調査クリニックのWEBページから飛び出して、マーケティング・サイエンスの実践活動を印刷物の形にまとめようと思い立ったのが2015年の3月のことでした。約1年前のことです。
データの価値とは何かについても自分なりの信念はありました。それは消費者を理解し、とるべき戦略を決めるためには、ただデータをたくさん集めてストックしただけでは何の役にも立たないということです。最終的にはマーケティングの処方箋を導けることが肝心です。
この基本的なコンセプトにそって、データドリブンなマーケティングの実践ガイドをまとめたいというのが上梓のねらいでした。
ねらいはともかく、私自身はマーケティングの実践現場を知りませんので、村山さんを含めて日本のマーケティング・サイエンスのトップランナーの諸氏にご助力願って、最先端の実践例を紹介してもらうことにしました。
というわけで2015年の7月に分担執筆者10人の方々とキックオフ・ミーティングを開き、原稿執筆をスタートさせた次第です。以上の経緯をへて、この4月に刊行されることになったのが次の新刊書です。
朝野熙彦「マーケティング・サイエンスのトップランナーたち~統計的予測とその実践事例」東京図書
2016年4月7日発行
本書は、とかくビッグデータの掛け声に踊らされがちな産業界の切実な悩みに応えるものであり、ビジネスの意思決定を導く実践的なガイドになることを目指しています。
私が書籍全体の編集にあたり、さらにこれまで「マーケティングの処方箋」で述べた一部の内容を転載することにしました。各章は自己完結的な内容とし、実務の上で発生する様々な課題に対して、最新の分析手法を応用することで明確なガイドを与えることを目指しています。
皆様にはぜひご高覧いただき、お仕事に活用していただければ幸いです。
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朝野 煕彦 (あさの ひろひこ)
1969年、千葉大学文理学部卒業後、マーケティング・リサーチの企業に就職し、コンサルティング業務を行う。1980年、埼玉大学大学院修了。その後、筑波大学特別研究員、専修大学教授を経て、東京都立大学、首都大学東京教授を歴任する。現在、中央大学および多摩大学大学院客員教授。日本マーケティング・サイエンス学会論文誌編集委員。日本行動計量学会理事。著書は「マーケティング・リサーチープロになるための7つのヒント」(講談社)など多数。