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分析裏話 第1回 そのセグメンテーション、本当に使えますか?

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『そのセグメンテーション、本当に使えますか? - 村山 幹朗

  現在様々な市場調査でセグメンテーションが行われていますが、実務で活用できるセグメントを作るのはなかなか難しいものです。

 通常、企業がセグメンテーションをする上でまず知りたい事は、「どのセグメントを狙うのが良いか?」つまりターゲティングの根拠となる情報です。例えば、「このセグメントは自社製品の購買意欲や購買率、ロイヤルティやリピート率が顕著に高いから、このセグメントをターゲットにするべきだ」「じゃあ、どうやったらそのターゲットに効率的にリーチできるだろう」という様な、セグメンテーションからターゲティング戦略へ繋がるファインディングスです。

 逆に、セグメンテーションしたけれど、「このセグメントは価値観がユニークで、また別のこのセグメントはライフスタイルがこんなに特徴的です。まぁ・・・御社製品への購買意欲やリピート率は、大体同じなんですけどね。」だと、意味が無いわけです。それだとターゲットの優先順位がつかないので、施策として市場全体へアプローチするのと変わらないからです。

 先日、ある案件でFMCG系のクライアントが以下の様なお話しをされていました。了解を得て、頂いた表現をほぼそのまま掲載しています。

 ”調査でセグメンテーションをお願いすると、価値観やライフスタイル等の変数を使って、「コンサバ系健康志向シニア」とか「オシャレ敏感新しいモノ好き女子」の様なクラスターが出てきます。一見”それっぽい”感じはするのですが、本当にそんな人いるんですかね?(笑)。というか、弊社の商品に対する反応は(どのセグメントでも)大体同じようなものなので、ターゲット選定に使えないんですよ。この様なタイポロジー自体は実務であまり必要ないし、もう(セグメンテーション)辞めようかな。結局、性年代で集計したデータ位しか使えないですよ。”

 リサーチ業界で解析をやっていると、セグメンテーション関連案件の約半分は大なり小なりこのジレンマに陥っている様に思えます。

 


 

■因子分析+クラスター分析の功罪

さて何故こういう問題が起こるのでしょうか。セグメンテーションと言えば「因子分析+クラスター分析」という位、因子クラスターが乱用されている事に関係しています。

まず1つは因子クラスターの分析ロジックの問題があります。この手法のロジックは、とりあえず価値観やライフスタイル、重視ニーズや生活背景、接触媒体など様々な説明変数を使って人を分けた後で、「どのセグメントがターゲットとしてふさわしいだろう?」と考えます。この時、多くの説明変数をまとめるのが因子分析、人を分ける為に使われるのがクラスター分析です。

しかし、クラスター分析は、セグメントを形成する説明変数の値が似ている人達が集まるようにワークする為、企業にとってより関心の高い”基準変数”、例えば自社製品の購買意欲や購買率の高低が同じような消費者が集まるとは限りません。「価値観やライフスタイルは違うセグメントは見つかったけど、商品に対する反応は大体同じ」のような問題はここが1つの原因となっています。

また、もう一つは分析に用いる項目精査の問題です。因子クラスターを使ったセグメンテーションをする際は、調査票作成の段階で、2つの重要なロジックチェックがあります。

1. その変数は、自社製品の購買意欲や継続利用意向、満足度などに寄与するのか?

2. その変数から得たデータを、企業は具体的な戦術として、どう活用できるのか?

1.多数の変数を用いてセグメンテーションを行っても、特に製品の購買や継続利用、満足度などに寄与しない変数であれば、企業はその情報を活用できませんし、逆に報告書は情報過多になってしまいます。重回帰やPLS、共分散構造分析などで予め基準変数への寄与を測っておき、項目の取捨選択をする事が大事です。マーケティングサイエンスに限らず、解析には「オッカムの剃刀」という考え方があります。ある事象を同じ精度で説明できるなら、シンプルな(変数の少ない)モデルの方がよい、という倹約の考え方ですが、同じことがセグメンテーションについても言えるでしょう。

 2.特に、ライフスタイルや価値観などのサイコグラフィック変数を用いた因子クラスターで言えることですが、例えば「リラックスする事が好き」な事が購買意向への寄与が高かったとします。しかし、リラックスにも色々あります。ストレスの原因もリラックスする為の方法も様々です。ターゲットのイメージングや、ストーリーテリングをするだけなら良いかもしれませんが、所謂サイコグラフィック変数をオペレーションで使えるものにするには「どの具体レベルにまで落とせば、施策に繋げられるか」を調査票作成時にに考えておく事が重要です。


 

分析裏話第1回、いかがでしたか?因子クラスターを用いた一般的なセグメンテーション方法の他にも、”決定木”という解析手法を用いたセグメンテーション方法があります。あわせてご参照ください。





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